奈良地方裁判所 昭和32年(わ)252号 判決 1958年2月28日
被告人 丸山臣一
主文
被告人を罰金二千円に処する。
右罰金を完納することが出来ない時は二百円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
訴訟費用は全部被告人の負担とする。
理由
被告人は自己の経営する奈良市菅原町所在の果樹園内に居住する鈴木鹿之助一家が既に右果樹園の管理人を辞しその居住家屋を昭和三十二年七月中に明渡すことを約束しながら、右期限を過ぎても家屋を明渡さず加えて右家屋に居住する間は右果樹園の仕事をする約束であるのに拘らず他所に働らきに行つて果樹園をかえりみない態度に憤慨し、一日も早く鈴木一家をして右家屋より退去させるため同年八月四日午後四時過頃同家裏手の鈴木方の飲料に供している浄水である井戸水のなかに携行した食紅五十瓦を溶かした水一升を注ぎ込んでこれを汚穢しよつて用うること能わざるに至らしめたものである。
(証拠)(略)
法律に照らすと被告人の判示所為は刑法第百四十二条罰金等臨時措置法第二条第三条に該当するところ、所定刑中罰金刑を選択しその罰金額の範囲内で被告人を罰金二千円に処し、罰金の換刑処分について同法第十八条に則つて右罰金を完納することが出来ない時は、二百円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、訴訟費用の負担について刑事訴訟法第百八十一条第一項本文に従つて全部被告人の負担とする。
よつて主文のとおり判決する。
(裁判官 松井薫)